彼女の夫も彼女も共に

細谷さん夫婦は、下町の使利な場所にあるマションに暮らして、その同じマンションの一階にプティクの店を持っている。彼女は仕入れや、ファッショγショーを見に行ったりで外出も多い。今は時間が充分ある夫との問を上手につなぐために、細谷さんは仕事と家庭を両立に忙しく立ち廻っている。「でもね。私は夫のお陰で立ち直り、今の自分があるんです。どんなに忙しくても大切にしなくちゃ:::」プティ1クの店をしているだけに、落ち着いたセγλの良い服を着て、女の目からも魅力的な彼女は、背筋をスッと伸ばし、年寄りくさいところは少しもない。その言葉を聞いたとき、女として私は彼女にほれ直した気持ちであった。何十年前の愛のなれそめなど忘れてしまう人が多いのに、夫が足手まといになっている状態をこぼさない。それどころか逆に夫への愛を口に出来るのは、彼女の夫も彼女も共に、これまでの何十年を愛情豊かに暮らしてきたからであろう。出会いでは愛し、愛されても、年輸を重ねていけば、人間の暮らしにはいろいろなことが起こる。経済的な危機もあれば、家族の中に病人も出る。その悪い状態が何年も続くこともある。そうでなくても、夫の仕事が、うまくいかなかったり、職場の上司と合わなくて不愉快な毎日を過ごすこともある。理屈では、夫婦が愛の紳でしっかり結びつき、二人で支え合えば、どんな困難も乗り越えられると分かっている。しかし、うまくいかないときは、いやなことがいくつも重なり、それに押しつぶされることもある。それはそれで、仕方がないことかもしれない。世の中には、離婚したり、そうしないまでも心がすっかり離れてしまっている夫婦も沢山いる。だが、何年か何十年か夫婦として生活していながら、この人と二人でやっていこうと心に決めたときの熱い思いをずっと忘れないで持ち統けていくには大変な努力がいるのではないか。努力していることを夫に気付かれないようにしている細谷さんは何と素晴らしい人だろう。最も必要な人は夫外国から日本に来ている何人かの友人と、何かの折に夫婦のなれそめの話になったことがあった。イタリアの友人が一吉った。「私は、彼を愛しているし、今、東京にいるときは、私は仕事をしていないし、夫の仕事は特に複雑で大変なようなので、朝は、なるべくギリギリまで寝ていてもらうの。そして、毎朝、彼の好きなものを入れた朝ごはんを用意してベッドに持っていくの」彼女の夫は、なかなかのハγサムで、私たちにも細やかな神経を使ってくれる紳士である。